【深掘り】すとぷりに見るアイドルの〝令和スタンダード〟

エンターテインメントユニット「すとぷり」は、令和の新時代を象徴するようなアイドルグループだ。主な活動場所は、YouTubeやツイキャスなどの配信プラットフォーム。そこで「歌ってみた」動画、ゲームの実況配信、メンバーで集まって遊ぶ姿などを届けている。

すとぷり(by提供写真)

そんな日常では、メンバー本人たちは登場せずに、2次元のイラストやVtuber(バーチャルYouTuber)のようなアバターを使って活動する。テレビや雑誌などのメディア出演時も、決して顔出しはしないスタイルで「神秘性」を演出している。

ただし、コンサートや握手会などのリアルイベントだけは、本人たちが登場。ミステリアスな彼らに、たまの機会だけは会えて、素顔が拝めるという「レア感」が、ファンの「飢餓感」や「幸福感」を倍増させて、より“尊いアイドル”になっていっている。

10年前までには、どこにも存在しなかった形のアーティストだ。

00年代までは、アニメやアイドルといったジャンルは、オタク、アキバ系などのフレーズとともに扱われて、決して芸能界のメインストリームではなかった。しかし、もともと実人気があるジャンルなだけに、年を追うごとに市場は拡大。その象徴的存在だったAKB48が国民的アイドルグループにまでなったころから、一般的な市民権を獲得。今では、老若男女が、アニメやアイドルを楽しむのが普通の世の中になった。

また、10年代からはYouTubeがテレビ以上のツールへと急成長。そんな時流に合わせて、16年にすとぷりは誕生した。2次元と3次元を軽やかに行き来することで、人気YouTuberとして頭角を現すのは、必然だった。

それまでは、自分の歌声やゲーム実況を他人に見てもらいたいだけでライブ配信をしていた10代、20代の青少年たちに、声を掛けてユニット結成に導いたのは、すとぷりのリーダーななもり。。その慧眼(けいがん)が、ニュースタイルのアイドル像を形作った。

物心ついたときから、スマホやタブレット内のYouTubeやライブ配信サービスが、テレビ以上に身近だった小中高生を中心に、その認知度は急速に拡大。結成4年目の19年には、メットライフドーム(当時)で初のドームコンサートを実現。コロナ禍を越えた22年には、全国5大ドームツアーも成功させて、名実ともに日本のトップアイドルグループの1つになった。

現在は、テレビ東京系で日曜午前10時に30分の冠番組を持っているが、テレビやラジオ、雑誌などの旧来のメディアへの依存度は、限りなく低い。自分たちで、いくらでも発信できるYouTubeやSNSがあれば、問題ないことを証明してみせている。

あるレコード会社関係者は「AKBグループが築いた“会いに行けるアイドル”スタイルに加えて、そこだけは素顔で現れるというさらなる希少価値をつけた。しかも、直接会えない日常でも、頻繁に生配信をし続けてネタが尽きない。ユーチューバーと歌手の2つの柱で活動しながら、さらに女子が大好きなかわいい王子様風のイラストやゲーム実況動画も駆使する。若い子が好きなツールと要素を全て網羅している」と解説した。

また別の芸能関係者は「本人たちが世間に正体がバレていない分、ファンの夢を壊すような生々しいスキャンダルも起こりにくいし、明るみにでにくい。リスクも低いところは、今後、ファンやスポンサーにもより受け入れられると思います」と予測する。

今では、すとぷりと同形態のアイドルグループが、次々に生まれてきている。従来のタレントとは全く違ったアプローチで成功したすとぷりが、「令和アイドルのスタンダードモデル」となる日も、そう遠くはなさそうだ。

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