【インタビュー①】草川拓弥、夏目漱石『こゝろ』着想ドラマで新境地「俳優としての分岐点になった」

俳優の草川拓弥(31)がショートドラマ「こころ」(中川龍太郎監督、日本映画専門チャンネルで12月8日よる8時ほか放送)に俳優・樋口幸平(25)とダブル主演する。文豪・夏目漱石の不朽の名作『こゝろ』に着想を得た、美しくも儚い物語。これまで多岐にわたるジャンルで確かな演技力を見せてきた草川だが、日本文学の最高峰を題材とした作品で、駆け出しの小説家である「私」を演じることは、大きな覚悟と責任を伴う挑戦だった。このほどインタビューに応じ、作品への思いを語った。(トピクル取材班)

ショートドラマ「こころ」についてインタビューを受けた草川拓弥

草川が演じる「私」は、大学時代に出会った妻「彼女」(夏子)と唯一の親友「彼」(樋口幸平)との間で、心の内が徐々に変化していく複雑な心情を抱える役どころだ。夏目漱石の世界観を現代に甦らせるにあたり、草川は「限られた場面で全力を出し切らないと(世界観は)伝わらないなと思いました」と、ショートドラマゆえの難しさを語る。

注目は、中川龍太郎監督が作り上げた独特な現場の空気感だ。約3日間という短い撮影期間ながら「まるで一本の長編を撮っているかのような濃厚さがあった」と振り返る。段取り、テスト、本番という流れが基本だが、中川監督はシーンによって「段取りをしたら、いきなり本番」というスタイルを採用。それは役者の心に寄り添い、その瞬間の「リアル」を映像に収めようとする演出だった。

ショートドラマ「こころ」についてインタビューを受けた草川拓弥

この異例の現場スタイルについて、草川は「まさしくセッションのような感じ」と表現。監督はカメラが回っている最中でも、役者に対し「これやってみて、あれやってみて」と指示を出し、時には台本にないリアクションが求められた。これによって、草川は俳優として大きな気づきを得たという。「お芝居ってこうあるべきだなとすごく思った」と型にとらわれず、その時の感情のままに表現できる環境の重要性を強調した。

自身の内面とも深く向き合った。中川監督は草川を「青い炎」と表現し、共演の樋口を「赤い炎」と例えた。この表現について、草川は「しっくりきました」とうなずく。青い炎を「赤より分かりづらく、内に秘めたメラメラ感みたいなものは赤よりもある」と分析する。この“内に秘めた情熱”は「私」を演じる上で非常に重要な「影」にもなっていたと感じている。

ショートドラマ「こころ」についてインタビューを受けた草川拓弥

「こころ」で試みたのは、単に役を演じることではなく、監督、共演者と心でぶつかり合い、その場のリアルな感情を表現し尽くすということだった。草川は「(今作が)俳優としての分岐点」になったといい「この作品で得たものはきっと忘れない」と強い手応えを語る。

今作で演技の型を破り、自由さと情熱のバランスをつかんだという草川。31歳を迎え、演技はこれからさらに深く、そして熱いものになるだろう。キャリアの新たな一歩が、今、鮮やかに幕を開けた。

【ヘアメイク】Rina Ohara 【スタイリスト】Rina Maruo 【撮影】キムアルム

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